21-01

21-01 知内ダムの地質

 道南の地質は東北日本の北方延長にあたるため、道央、道北および道東の地質とは成因が異なっている。道南は、白亜紀から古第三紀にかけて、アジア大陸の東の縁に位置しており、まだ日本海は存在していなかった。新第三紀に入ると、大陸の東の縁は東に移動を始め、移動した部分と大陸の間に日本海が生まれた。この変動により日本海では激しい火山活動が起こった。この火山活動により放出された噴出物は変質により緑色をしているため、グリーンタフと呼ばれている。グリーンタフは渡島半島、東北地方の日本海側からフォッサマグナにかけて連続して分布し、この地域をグリ-ンタフ地域と呼ぶこともある。

 道南には古生代から現世までの、各地質時代につくられた地質が分布しているが、大半が新第三紀以降の地質から成り立っている。道南に建設された農業用ダムはいずれも、新第三紀以降の地質を基礎としている。したがって、ここでは新第三紀以降の地質の説明に限定する。

 道南の新第三紀以降の標準的な地質は、下位から上位にかけて中新世の福山層、訓縫層、八雲層、鮮新世の黒松内層、第四紀更新世の瀬棚層に分類されている。福山層と訓縫層は主に火山砕屑岩で構成されている。八雲層は深海に細かい泥が静かに堆積した結果できた均質で硬い頁岩を主とする地層である。黒松内層は、深海に堆積した八雲層と異なり、火山活動が活発になるとともに次第に浅くなった海に堆積した地層である。シルト岩、砂岩および凝灰岩で構成されている。瀬棚層は氷河性海水準変動により水深が変動した時期に堆積した地層で、礫岩、砂岩で構成されている。

 新第三紀は活発な火山活動が行われた時代のため、各時代の地層には、いろいろな種類の火成岩や岩脈などが認められる。

 道南では古くから、中新世以降の標準地質は下部から中新世の福山層、訓縫層、八雲層、鮮新世の黒松内層、第四紀更新世の瀬棚層とされている。しかし松前半島においては、八雲層と黒松内層の名称は使用されず、木古内層、厚沢部層、館層に区分されている。木古内層および厚沢部層は八雲層に、館層は黒松内層に相当する。

 木古内層は中新世の深海に静かに堆積した細粒の堆積物からなる頁岩が主である。木古内層上部の塊状のシルト岩からなる地層を特に厚沢部層と呼び、区分している。館層は鮮新世以降に浅海に堆積したシルト岩、砂岩、凝灰岩から構成される。

 知内ダムの基礎岩盤は、厚沢部層の塊状で無層理のシルト岩であり、時に薄い凝灰岩を挟んでいる。ダム近傍の地層はゆるい傾斜の単純な地質構造を示し、大きな断層や破砕帯は確認されていない。

 シルト岩は、この時代の堆積岩としては硬質であり、未風化岩の一軸圧縮強度は20Mpa以上ある。凝灰岩層はシルト岩層と比較すれば軟質であるが、重力ダムの基礎として十分な強度を有している。シルト岩で行われた、せん断試験結果によれば、τ=1+σtan45°(MN/m^2)が得られており、堤高40mの重力ダムの基礎として十分な強度を有している。

 新第三紀の軟岩内の水の流れは本来、間隙内の水の流れであるため、透水性はそれほど高くない。厚沢部層のシルト岩は塊状緻密な岩盤のため、水みちとなりやすい層理面や節理に乏しく、難透水性である。したがって、止水性に関しても大きな問題のない基礎岩盤である。

 知内ダムでは施工時に、河床中央部においてダム軸と斜交するほぼ垂直な小断層が認められた。断層の幅は0.6~2.0mで、周囲の岩盤より破砕が進んでいるため、周辺より透水性は高いが、浸透破壊をもたらすような岩盤ではない。しかし、断層破砕帯の固化と周辺岩盤との一体化を目的として、断層処理グラウトが行われた。この断層についてはコンクリートによる置換も行われている。

 知内ダム貯水池内には写真判読や現地調査により、11か所の地すべりが認められた。これらの地すべりのうち、急激な地すべり活動により、利水機能の低下や濁水発生による下流の漁業への影響が考えられる地すべりは4か所であった。この4か所の地すべりについては、対策が必要とされ、対策工法として抑え盛土が行なわれた。

 知内ダムでは、貯水池外の流入河川沿いに地すべりが認められる。豪雨時には、これらの地すべり地内から泥水が流出し、湖水を濁水に変化させる。しかも湖水の濁りは長時間続く。

 ダム湖の濁りが長時間続くダムとして、桂沢ダム(新桂沢ダムを建設中)を挙げることが出来る。桂沢ダムも地すべり地内から流出する泥水によるダム湖の濁りに長い間悩まされてきた。桂沢ダムの濁水をX線で分析すると、イライトや緑泥石などの粘土鉱物の微粒子からできており、上流に分布する泥岩の構成鉱物と一致する。これらの粘土鉱物は水中で長時間沈殿しない性質を有しているため、湖水は長い間清澄とならない。

 知内ダム周辺の厚沢部層にも桂沢ダムと同様な粘土鉱物が含まれており、桂沢ダムと同じ原因で濁水が発生していると考えられる。下流の漁業への影響を考えると、今後、貯水池のみならず流入河川においても濁水対策が望まれる。

型式:重力式コンクリート

完成年度:1992年

堤高/堤頂長:40m/321m

総貯水量:650万m

水系名/河川名:知内川/ミナゴヤ川

知内ダム