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21-35 堤体下流面からの浸透水

 クライアントからコンクリートダム下流面の滲出を止めることが求められた。これまでの調査では原因究明が頓挫し、表面的な補修では解決できず、ダム定期検査の度に河川管理者から指摘され、地元からも不安の声があるとのことであった。

 滲出水は常時堤体下流を濡らすわけではなく、水位や時間にもよるとのことであった。状況を確認するため堤体下流面に定点カメラを設置するとともに、堤体打設時の写真をすべて確認し、浸透経路となる止水板の施工不良による可能性を検討、越冬面処理の状況を確認した。定点カメラの結果から、水位が一定であっても時間的に浸透模様が変化することを確認した。下流面を近接撮影し、施工継ぎ目からの滲出は分かったがそこへ至る経路が不明であった。監査廊内の滲出、止水板背面の排水も無く、ほぼドライの状態であった。

 水面は堤体上流側と堤体下流面の水位測定塔にあることから、いくつかの経路の可能性を想定する。下流滲出部と同じ打設ブロック上流面を中心にゴンドラを使用した目視調査、水平ボーリングと孔内カメラによる観察、さらには着色水を継ぎ目付近に水中放出し、水煙の動きをカメラで撮影した。残念ながら、これらの調査からは有意となる経路情報を得ることはできなかった。下流滲出面に近い水位測定塔の内部調査では、内壁面に2箇所の水平亀裂を確認したが、いずれもエフロレッセンが付着しており、浸透経路の可能性は低いと評価した。

 下流定点カメラでは滲出画像と同時に表面温度も記録した。堤体下流面が南方向を向いており、昼間は水位観測塔の温度が堤体部より高くなることが記録された。ここで仮説として、水位観測塔が堤体との温度差により挙動することが考えられた。堤体面も温度上昇するが、上流面には貯水もあり大きく変化はしない一方、水位観測塔の上部は堤体からはみ出す形状となっており、陽の当たる表面と水柱のある内面との温度差は、塔体に温度応力を発生させる可能性があった。

 対策として、水位観測塔の内部に円形止水板を設置することとした。水位観測塔の内部には上下、2箇所の亀裂があったが、変動が大きいと想定した上部に止水板を設置することで、下流の滲出を解消することができた。

 それにしても、なぜこの堤体規模で水位計測塔が必要だったのだろうか?

 

21 知内ダム