13-01 上磯ダムの地質
上磯ダムは函館平野の西縁を区切る上磯山地に建設されたダムである。上磯地域の地質は下位から、先第三紀の上磯層群、新第三紀中新世の戸田川層(八雲層相当)、新第三紀鮮新世の茂辺地川層(黒松内層相当)、第四紀更新世の富川層(瀬棚層相当)である。
上磯ダムにおいて特筆すべきことは、函館平野とその西側の上磯山地との境界に、函館平野西縁断層帯と呼ばれる活断層が存在することである。函館平野西縁断層帯は南北方向に全体として延長24㎞の長さがある。この断層帯は、2条の断層群、すなわち東側の渡島大野断層、西側の富川断層から構成される。政府の地震調査研究本部によれば、活動時には断層西側が東側に対して3m程度隆起すると考えられている。今後30年間の間に発生する可能性が、我が国の活断層の中では「やや高いグループ」に属している。
上磯ダムは西側の富川断層に極めて近い位置にある。上磯ダム左岸が取りつく山稜の東側すそ野と平野の境界に富川断層が存在するとされている*1。発生する地震のマグニチュードは7.0~7.5と推定されているため、ダムへの影響は避けられない。地震時のダムの挙動についての検証がなされているが、その内容についての知見は持ち合わせていない。
上磯ダムの基礎岩盤は第四紀更新世の富川層である。富川層は道南の標準地質である瀬棚層に相当する地層である。鮮新世の茂辺地川層堆積後、いったん陸化し浸食作用を受けたのち、海水準変動による海進が生じ、当地域は再び海面下に没した。富川層はこの海進時の浅海に堆積した地層である。富川層は大きく分けると、礫岩主体の下部層、細粒砂岩主体の中部層、巨礫岩層からなる上部層に分けられる。
下部層はインブリケーション(瓦重ね配列と呼ぶ、将棋倒しのような礫の積み重なり)の発達した厚い礫岩層と斜交葉理の見られる砂岩層からなる。中部層は、貝殻混じりの淘汰の悪い礫岩層、インブリケーションの発達した礫岩層、斜交葉理の見られる粗粒~中粒砂岩層、礫を含む砂岩層など、多様な岩相が繰り返し出現するサイクリックな地層である。上部層は巨大な礫を含むインブリケーションの発達した礫岩層からなる。時に亜炭を含むシルト岩層をはさむ。
上磯ダムは地層の変化の著しい富川層中部層に建設されている。富川層中部層は、多様な岩相が繰り返し出現し、しかも岩相の連続性の著しく悪い地層である。このためボーリング柱状図に記載された地層を連続して追跡することが困難である。そこで地層を構成する物質の粒形に着目し、礫に富む地層と礫が乏しい地層に大きく二分することにより、地質図が作成された。ダム軸の地質断面図は、4層の礫に富む地層と4層の砂に富む地層が交互に重なっている。
富川層は礫岩層と砂岩層から成り立ち、しかも礫岩層には透水性の高いインブリケーションが多数存在するため、比較的透水性の高い地層である。ダム軸の地質は、4層の礫岩層と4層の砂岩層に区分されているが、砂岩層の透水係数は2~4×10^-2m/day、礫岩層の透水係数は1~2×10^-1m/dayである。
上磯ダムの基礎岩盤は、第四紀の弱い半固結堆積物である。フィルダムが透水性の高い岩盤上に建設された場合、岩盤や提体着岩部の遮水材料に過大な浸透流速が作用することにより、パイピングなどの浸透破壊が生じることがある。上磯ダムの基礎岩盤は比較的透水性が高く、上述の懸念を払しょくするため、二次元浸透流解析が行われている。解析の結果、浸透流に対して基礎岩盤や遮水材料の抵抗性は十分にあると結論付け、湛水試験を開始している。
上磯ダムダムサイトの地質は、次の場所で確認できる。国道228号を木古内方向に走り、太平洋セメント上磯工場のベルトコンベアーを過ぎてすぐ、谷好寺と谷川神社の間の道路を北に進み、細小股沢林道に入る。少し進むと、細小股沢川にかかる2号橋がある。この橋の上下流300mの河床に富川層が連続して露頭している。この露頭は上磯ダムの基礎岩盤の地層とほぼ同一である。この地層を見ることにより、どのような岩盤の上に上磯ダムが建設されたのかがよくわかる。さらに川を上流にさかのぼると、灰色の泥岩や凝灰岩が現れてくる。これは富川層の下位の地層である茂辺地川層である。ここでは富川層、茂辺地川層の不整合面を観察できるので、新第三紀と第四紀の時代の異なる二つの地層を同時に見ることができる。両地層を比較することにより、ダム基礎としての新第三紀層と第四紀層の相違、特に両地層の硬さの違いを実感できる。第四紀層にダムを建設する場合の注意点も理解できる。
*1 「函館平野西縁断層帯の評価」地震調査委員会(2001)
「活断層評価デジタルマップ[新編]」今泉俊文ほか編(2018)
ダムとの位置関係はデジタルマップのほうが見やすい