19-01

19-01 駒ヶ岳ダムの地質

 道南の新第三紀以降の標準的な地質は、下位から中新世の福山層、訓縫層、八雲層、鮮新世の黒松内層、第四紀更新世の瀬棚層に分類されている。

 福山層と訓縫層は主に火山砕屑岩で構成されている。八雲層は深海に細かい泥が静かに堆積した結果できた均質で硬い頁岩を主とする地層である。黒松内層は、深海に堆積した八雲層と異なり、火山活動が活発になるとともに次第に浅くなった海に堆積した地層である。シルト岩、砂岩および凝灰岩で構成されている。瀬棚層は氷河性海水準変動により水深が変動した時期に堆積した地層で、礫岩、砂岩で構成されている。

 新第三紀は活発な火山活動が行われた時代のため、各時代の地層には、いろいろな種類の火成岩や岩脈などが認められる。

 函館から国道5号を北上し、森町を過ぎるころ、道道606号霞台森停車場線との交点がある。交差点を左折し、鳥崎川に沿って進むと鳥崎渓谷の美しい景色を楽しむことが出来る。森町は渓谷内に鳥崎八景を設定しており、駒ヶ岳ダムも第六景として選ばれている。

 鳥崎川の流域では、下流から上流にかけて、道南の新第三紀の代表的な地質である黒松内層、八雲層および八雲層を貫く安山岩を見ることが出来る。

 交差点から2.5㎞のところに屏風崖、4.5㎞のところに獅子狭間がある。ここでは灰白色の凝灰質砂岩と凝灰角礫岩の互層を見ることが出来る。この地層は海底火山の噴火により形成された地層であり、新第三紀鮮新世の黒松内層にあたる。さらに1㎞進み、虹かけ岩に至ると、地質はすっかりと変わり、柱状節理の発達した安山岩が登場する。この安山岩は八雲層を貫いている大規模な貫入岩である。この安山岩の急崖が鳥崎八景の渓谷美を作り出している。さらに2㎞進むと駒ヶ岳ダムが見えてくる。

 駒ヶ岳ダムの提体を過ぎるとすぐに道路は上り坂となる。坂の途中に切割りがあり、露頭となっている。切割りのダム側の露頭を観察することにより、ダム基礎の地質を想定することが出来る。この露頭では変質安山岩と頁岩が接触しており、上流側が変質安山岩、下流側が頁岩である。境界部の頁岩は熱水変質により粘土化している。粘土化していない頁岩も変質により板状の節理が発達している。この頁岩は新第三紀中新世の八雲層にあたる。また安山岩自体も変質により緑泥石が生成し、緑色を帯びている。ダム調査時には、この変質した安山岩を「変朽安山岩」と称していた。近年地質の分野では、岩石名としての「変朽安山岩」は使用しないため、現在の名称は変質安山岩となる。ここでは変質安山岩の名称を使用している。

 駒ヶ岳ダムは八雲層の頁岩とその中に貫入した大規模な変質安山岩の貫入境界に設けられている。ダムの主な基礎岩盤は貫入した変質安山岩であり、深部まで冷却節理が発達しており、高い透水性を示す。貫入岩は変質しているが、堅硬で重力ダムの基礎として十分な強度を有している。変質安山岩は冷却節理による高い透水性状を示すため、岩盤内浸透流について浸透流解析が実施された。特に、カーテングラウト施工後のグラウト施工範囲からの漏水量が解析により検討されている。

 一方、貫入境界部の頁岩は貫入時の応力と熱により粘土化している。境界部から少し離れた頁岩も貫入時の熱により板状の節理が発達しており、水みちとなりやすい。このように水みちとなりやすい場所に粘土層が存在するため、浸透流による粘土層の浸透破壊を懸念して、二次元および三次元の浸透流解析が実施された。

 浸透破壊抵抗性の指標としてTerzaghiの限界動水勾配、またはJustinによる限界流速がある。駒ヶ岳ダムでは浸透破壊を評価する方法として限界流速が用いられたため、解析は浸透流速に重点を置いて行われた。解析上得られた浸透流速を、久保田・田中による浸透破壊を生じないための限界流速を求める式に照らし合わせ、粘土層の浸透破壊の心配はないと結論付けている。

 堅固な岩盤にダム基礎を求めた時代から、軟岩などの強度の低い岩盤にダム基礎を求める時代となり、ダムの技術的課題が提体から基礎処理に移ってきている。浸透流によるダム基礎岩盤の破壊に対する安全性の検討はその一つである。特に軟質地層と亀裂性岩盤の境界部における浸透性破壊の検討は重要である。駒ヶ岳ダムにおいて粘土層と亀裂性岩盤の境界部における浸透破壊抵抗性の検討が行われたことは、そのような流れの先駆けとも言える。

 駒ヶ岳ダムや上磯ダムでは浸透破壊の検討は浸透流解析により行われた。今後は浸透流の出口付近をモデル化し、Terzaghiの考え方に基づいた浸透破壊を直接評価できる原理も単純で安価な室内浸透破壊試験が多くなるように思われる。

 駒ヶ岳ダムは赤いラジアルゲートが印象的なダムである。「みどりとロックの広場」から駒ヶ岳ダムを見上げるのも良いが、ダム湖を横断する新鳥崎大橋を渡り、水煙をあげるダイナミックな上大滝まで足を運び、美しいダムを堪能してほしい。

 

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